核兵器禁止条約について学ぼう(その四)

 核兵器禁止の難しさ

そして、核禁止というのは現実的には非常に難しいことです。世界中でいっせーので核兵器を廃棄することができれば可能でしょう。しかしながら、他の国が廃棄して一つの国だけが廃棄せずに保有していれば、世界の軍事的バランスは崩れます。

その結果、核を保有しているその一国が世界を牛耳ることとなります。これは世界からなぜ軍隊がなくならないかという話とも通じるものでしょう。例えば日本が軍隊(自衛隊)を放棄しても、周辺諸国が放棄しなければ、軍事的バランスが崩れ、攻め込まれても防衛することができなくなり、自国の破滅を招くことになりますから、自国の戦力を放棄することはできません。囚人のジレンマにも似たような感覚を覚えます。ただそれが現実で、今現在存在する力を放棄するときには一斉でなければならないわけですが、現実問題として一斉に力を放棄することは、リスクが伴うためできないということです。だからこそ、上述のように少しずつでも一歩ずつ、軍事的バランスが崩れないようにちょっとずつ核兵器国全体で軍縮を進めていって、それが限りなく小さな段階になって初めて核兵器禁止条約が現実化してくるでしょう。

 終わりに

ということで、日本が核禁止条約に参加しない理由、核兵器が世界からなくすことの困難さを見てきました。日本政府が核をなくすという理念に不賛同というわけではなく、安全保障上今現状難しいというのも当然ありますが、将来の核のない世界を見据えた上でも、現在核禁止条約に入ることが本当に意義あることなのかを考えた結果であることも把握すべきでしょう。日本政府は23年連続核廃絶決議案を提出し続け、NPT体制の強化など核のない世界に向けての行動は行っています。

核の傘の恩恵を受けているからというだけではないということです。まずはCTBT、FMCTを着実に前に進めて、NPT体制を本当の意味で確立して、その結果核軍縮が進み、将来的に核禁止条約に参加できるようになるための努力を、被爆者の思いに応えるためにも、日本政府は行い続けなければなりません。核の惨禍が二度と繰り返されることのない世界を、核兵器のない世界が一刻も早く成立することを、心から願っています。